現在の国内ヒッコリーゴルフは、当SOCIETYに入会し各種イベントに参加されている方々と個人や数人でプレーや蒐集を楽しんでいる方々に分かれ、使用する用具についても1935年以前の当時モノと、現代に作られた復刻版(以降、モダン・ヒッコリーと呼びます)に分かれています。
1920年前後のモデルを原型としたモダン・ヒッコリーのクラブは、球聖ボビー・ジョーンズが愛用したトム・スチュアート社,ジョージ・ニコル社,ジャック・ホワイトを筆頭に、Wm・ギブソン,ロバート・フォーガン&サンズ,ハリー・ヴァードン,マグレガー,ウィルソン,スポルディング各社の当時の人気モデルが復刻されており、いずれもシャフトが新しく頑丈で、品質やロフトやライ角等の数値が安定しているという大きな利点があるので大多数のプレーヤーが使用しています。そのほか1840~1880年頃のロングノーズクラブを再現したモデルも名工として知られるヒュー・フィルプ,マキュアーン家,ウィリー・パークなど、ヒッコリーゴルフ時代に高く評価されたブランドの上質なクラブがマスターモデル(お手本)になっています。
一方で、ヒッコリーシャフトからスチールシャフトに移行した1935年頃までに製造・販売されたオリジナルのクラブについては、100社を優に超えるであろう当時のメーカーと数多くのプロゴルファーが製作した豊富なバリエーションがあり、良い物には見栄えや打感等が復刻版よりも勝る味があるので、海外では多くのプレーヤーがオリジナルクラブ(組み立て直しや、新しいシャフトやグリップ装着等のレストアがされています)を使っていますが、日本では今のところ『当時のクラブに魅了されている』『当時の物でプレーしたい』『オリジナルの物を使ってこそヒッコリーゴルフの妙味が在る』という専門的に愉しまれる方々に限られています。
また日本においては、オリジナルのヒッコリークラブは“中々見つからない。といえば在り、“在る”といえば中々目につかない。“という表現が一番適していると思います。
(幾つかの注目すべきそれ以前の記述史料が有りますが)正史に於いて日本のゴルフは英国人実業家で六甲山開発・景観保護に尽力されたアーサー・グルーム氏らの発案(1898年着工)で六甲山に最初の4つのホールが完成した1901年から始まっており、1903年設立の神戸ゴルフ倶楽部や、日本初の西洋式競馬団体である日本レース倶楽部によって創設された日本レース倶楽部ゴルフィングアソシエーション(NRGCA,1906年創設)が、イギリスとアメリカから直接取り寄せた1907年ごろ(国内販売が本格的になったのは1920年前後)から1937年の日中戦争開戦による物品統制でゴルフクラブの輸入が禁止になるまで、ヒッコリークラブの新品やパーツが入荷販売されていました。その後も1980-90年代のバブル期にアンティークのゴルフ用品が注目され(投機目的の収集が殆どだった様ですが)、収集品としては価値が無かったものの、現在の観点ではプレーイングクラブに向いている1900~30年代のクラブが相当数輸入され、海外から大量に持ち帰ったコレクターが少なからず居た事から、日本国内には全国のゴルフ場,ゴルフ関連団体,展示・保存施設などが所有するものを含めて1万本前後のヒッコリークラブが存在するのではないかと推察しています。
もっとも、自分に合ったクラブを探すに当たってはヒッコリークラブ専門ショップ(東京のThe Hickory Golf Shopと愛知のSanta&Co)に問い合わせて購入する方法が確実ですが、時間があれば宝探しのようにネットオークションの商品を検索したり、骨董店を回って探すか、店主に競り市や買い付けで出てきた逸品の購入予約をお願いするのも楽しいかもしれません。
値段については海外の状況と比べると、日本に於けるヒッコリークラブはバブル期の様な法外な値段設定は少なくなったものの、市場が未発達なのでクラブの価値を理解している専門ショップを除けば、海外でも安価なものと愛好家・専門家が目の色を変える良い物・貴重なものが一緒くたにされ、それが安いか高いか。という二分割的状況になっています。
オークションや骨董店で上手く探せば(時として信じられないほど)安い値段で高品質~貴重な物を入手できる事もありますが、海外に比べて安いといってもそのまま使えるのは少数で殆どはレストアが必要である事が多いのが現実です。なぜなら国内に於けるオークションで出品している個人や業者さんはラウンド用のクラブとして出品している訳でなく、骨董品の『シャフトが木のゴルフクラブ』として紹介しているからです。従いまして、入手したがプレーに使用できない物があったとしても全て自己責任である事をご留意下さい。
そういった諸々の事からネットオークション等に於ける一本当たりの値段について、筆者の見解としては国内の場合は未レストア品がほぼ総てあることを考え、アイアンはヘッドさえ無事ならばシャフトを交換しつつ現に100年以上も使えているので、ブランドやコンディションにもよりますが一本1万円以内を目安にすると良いでしょう。
ウッドについては良い物がなかなか無いので(良さげに見えても打ったらネックが割れてヘッドが吹っ飛ぶ事もあるので判別が難しいのです)1~3万円で出たとこ勝負になります。
1万円越えのアイアン、3万円超えのウッドについての見解としては、ブランドと品質、好みの形状か、そして使用に耐えられるかを良くチェックしてから考える事が大切です。また、もしそのまま使えるレストア品がこの値段で出ていたら海外基準ではお買い得な価格です。
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